発達障害(もしくはそれらしき傾向)~増加の背景など~

ここ数年、「原因ははっきりしないけどなんとなく業務に支障がある」「言っていることがよくわからない」など漠然とした相談を会社の担当者から受けることが多くなってきました。また、「健康相談に来るたびに訴える症状が変わる」「相談内容になんとなく整合性がない(違和感がある)」「心療内科などに通院して症状は改善しているはずなのに職場での状況に改善がみられない」などといった事例も経験するようになってきました。もしかすると、皆様のまわりでもこういった「ちょっと対応に困る事例」が増えてきているのではないでしょうか?

具体的には、以下のような感じだと思います。

  • 業務の指示が伝わりにくく、何度指導しても改善しない。
  • ケアレスミスが多く、同じミスを何度も繰り返す。
  • 正当な業務指導に対して被害的な感情を抱く。
  • 視点がずれた独自のこだわりが強く、修正が困難。
  • 割り込み的な突発業務に弱く、混乱しやすい。
  • 協調性に欠け、職場の雰囲気を乱す。

このような傾向を持った人は、これまでも職場で見られることはありましたが、今までは「ちょっと困った人・変わった人」として扱われ、職場で大きな問題になることは多くはなかったように思われます。しかし、労働環境や社会環境が変化していく中で、これらの傾向を持った人が増え、問題化してきています。そして、どうやら「発達障害もしくは発達障害傾向のある人」ではないかと考えられるようになってきました。

以前から「発達障害」は、就学前から学童期の子供に関してはよく認識されており、教育の現場での理解や公的な支援なども議論されてきました。学童期など早い段階から、いわゆる「自閉スペクトラム症」や「注意欠如・多動症」など症状がはっきりしていれば、医療や公的支援、障害を前提とした就労など様々な対策・介入がなされています。一方で、学齢期にはほとんど症状は顕在化せず、学業も優秀で普通に就職し、社会生活に入る場合もあります。
実は、発達障害は軽症のものや顕在化していないものを含めると人口の10%を超えるのではないかと言われています。このうち支援を必要とするケースは一部と思われますが、人口に占める割合はとても多いといえます。

近年のIT化やグローバル化は、これまでの比較的変化の少ない安定した社会から、様々な変化や不確実性を伴う社会へと移行させたといわれています。それは、変化への対応や適応を求められる社会ともいえます。この社会的変化に伴って、従来の社会においてはどうにか対応・適応できていた人がうまく適応しきれなくなってきたと考えられます。このことが、社会や職域において「発達障害傾向のある人」を顕在化させた側面もあると思われます。

以上のような状況から、職域においても「発達障害傾向のある人」への対応は、一つの大きな課題になっていくと予想されます。対人口比を見てもどこの職場にもこのような傾向を持った人はいると考えるのが普通です。一方で、このような事例への対応は、今までのような「過重労働などの業務に起因するメンタル不調」への対応ではうまくいかない場合もあり、今後取り組んでいかなくてはならない新しいテーマといえます。正直なところ、私も対応に苦慮することが多く手探りの状態です。職域におけるその特徴や対応などを継続的に考えていこうと思います。