睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠時無呼吸症候群 (SAS)とは、眠っているときに何回も呼吸が停止したり、浅くなったりすることによって体内の低酸素状態が引き起こされる病気です。日中の強い眠気や集中力低下など業務遂行に支障をきたすことがあり、職域で問題となることも増えています。とくに自動車運転業務が中心となる運送業で問題となることが多く、国土交通省でも対策がなされています。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を悪化させたり、脳・心臓血管障害の危険性を高める要因ともなりえます。適切な治療によって大きな改善が見込めるため、早期に発見して医療的対応などに結び付けることが大切です。

 症状
  • 大きないびきをかく
  • 睡眠中に呼吸が苦しそう、息が止まっていると指摘される
  • 息が苦しくて目が覚める
  • 熟眠感がない
  • 朝起きた時に頭痛・頭重感がある
  • 日中の強い眠気

主に上記のようになります。いびきや無呼吸症状は、睡眠中の出来事であるため本人の自覚が難しく、家族によって指摘されることも多くあります。また、必ずしも日中の眠気を自覚するわけではなく、疲労感や倦怠感が継続する場合などもSASを疑う必要があります。

原因

原因は、大きく分けて2つあります。一つは、呼吸自体はなされても空気の通り道である気道のどこかが閉塞することによって鼻・口の気流が停止する閉塞性(obstructive:OSAS)です。もう一つは、脳による呼吸のコントロールがうまくいかなくなる中枢性(central:CSAS)です。ほとんどの場合は、閉塞性のOSASだと考えられます。一般に肥満傾向にある人に多いといわれますが、日本人では必ずしも肥満を認めないことも多く、あごが小さい人や首が細い人にも多いといわれています。

診断・検査
  • 肥満などのリスク確認(気道閉塞の可能性)
  • 問診・・・症状の聴取、眠気指数テスト(ESS)など
  • 簡易式検査・・・自宅で検査可能な機器を使って、精密検査が必要か判断
  • 睡眠ポリグラフ検査(PSG )・・・体に色々なセンサーをつけて「脳波、心電図、睡眠時の呼吸、いびきなど」を記録し、総合的に解析

まずは、自覚症状や家族の指摘などから疑ってみることが大切です。

以下は、簡便な自己スクリーニングの「エプワース眠気尺度(Epworth sleepiness Scale:ESS)」です。 1~8の各項目の該当する点数を合計して、11点以上であればSASの可能性が高くなります。

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エプワース眠気尺度

SASを疑って医療機関を受診すると、まずは自宅でも実施可能な簡易検査を行います。簡易検査でSASが疑われた場合、1泊入院で終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG )を行って睡眠中の呼吸の状態を詳しく評価します。無呼吸(10秒以上の呼吸停止)や低呼吸(呼吸による換気が通常の半分になっている状態が10秒以上)が睡眠1時間あたりに発生している回数(AHI:apnea hypopnea index)を調べ、SASの診断や重症度の評価を行います。

治療
  • 軽症・・・減量や節酒などの生活習慣改善、マウスピース
  • 中~重症・・・CPAP療法

前述のように適切な治療を行うことで、日中の眠気や倦怠感などの症状が消失し、合併症の予防や改善にもつながります。

中等度以上では、CPAP療法(Continuous Positive airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)が選択されます。これは、睡眠の際にマスクを装着し、鼻から空気を送り続けることで上気道を開いて呼吸をアシストする治療法です。CPAP装置はレンタルにより自宅にて継続的に使用することができます。

睡眠中の呼吸状態を改善することによって、良質な睡眠を確保することが治療の主眼となります。

職域での対策

自動車運送事業者を対象とした対策については、国土交通省から「睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル」が出されており、詳細が示されています。運送業以外の業種でも参考になると思われます。

重要なことは以下の点を啓発することではないかと思います。

  • 症状がある場合、SASを疑ってみる。
  • 疑われる場合には躊躇せず医療機関を受診する。受診勧奨する。
  • SAS検査(対策)は労働者の健康と安全を確保するために必要である。
  • SASを理由に不平等な扱いはしない。
  • 適切な治療をすれば、大きな改善が見込める。
  • 業務上の配慮は、検査結果や重症度、治療での改善状況などを総合的に勘案して適切に行う。

特に大切なことは、自動車運転や機械操作などでの労働災害を防止することであり、さらには労働者の健康を守っていくことです。これらが最大の目的であることを常に意識することが必要です。